廃棄物が素材に

ゴミは本当にゴミなのか

制作に必要な資材を調達する際、まず学内に設置されているゴミ置き場に行きます。そこから自分が欲しい材料が見つかればラッキー、見つからなければ一般販売されている商品から選んで購入します。ゴミ置き場を見に行く度に、今は必要ないけれど違う機会に使う事ができそうな材料が結構あるという事について考えます。
現在世界的に「持続可能な社会」に向けて具体的な取り組みが行われています。法律の制定、循環性の高い新素材の開発、廃棄ロスを減らすマーケティングなど様々な取り組みがある中、今回私は「廃棄物」の現状と、素材としての利用に着目しました。

廃棄物の行方と活用

廃棄物は大きく分けて家庭から排出される「一般廃棄物」と企業から排出される「産業廃棄物」の二つがあります。処分の仕方によって扱いが異なる為、本来は再生可能な資源が廃棄処理される事もあります。特に企業から出る産業廃棄物の量は現在の一般的なビジネスモデルから見ると恐ろしい量で、様々な理由によって廃棄されていきます。現在では、企業または一般家庭で廃棄予定だった物を素材として使用する事例が「アップサイクル」の視点で注目されています。

本記事で扱うアップサイクルの定義

廃棄物を使用した製品

古材を活かしたヴィンテージ空間

株式会社パレットハウスジャパンは古材の風合いを活かしたアップサイクル家具の販売と、内装空間、イノベーションをトータルでデザインしています。主に関西地方の物流で使い古された木製廃パレットや、建築現場で使用された足場古材など、通常「産業廃棄物」として処理される木材を素材として使用しています。回収した古材は物によって状態や特徴が異なる為、解体・洗浄・乾燥・選定〜制作までの全工程が手作業で行われています。また廃パレットは様々な国から渡ってきた物もあり、強いストーリーや個性が感じられます。

古材家具と空間を作る町工房 パレットハウスジャパン

店舗・内装DESIGN・家具全般販売・オリジナル家具・施工までトータルにインテリアプロデュースする「PALLET HOUSE JAPAN」の公式ホームページです。

旅する家具

gleam(グリーム)ではインド洋、アジアの国々で使われなくなった廃材を使用したオーダーメイド家具の販売と、スペースデザインを行っています。かつては舟、枕木、民家に使われていた木材や、ドラム缶、金属類など様々な廃材を厳選し、現地の工場で、職人の手作業で新しい家具を製造しています。それぞれの素材にある「刻んだ歴史」を活かし、新しい家具として歴史を刻むというコンセプトが魅力的です。

gleam | 廃材を使った手作り家具とインテリア・雑貨ショップ

様々な道を歩み、ひとつの役割をまっとうした「 廃材」これからは家具として、みなさまと共に歴史を刻みます。 使われなくなった廃材を新たに活用できないか、そこからgleamはスタートしました。 …

海洋ゴミから生まれるファッション

Ecoalf Recycled Fabrics, S.L.(以下 Ecoalf社)はスペイン生まれのサステナブルファッション企業です。2019年9月には株式会社三陽商会との合併で「エコアルフ・ジャパン」が設立されました。様々な取り組みの中、廃棄物利用の視点から「UPCYCLING THE OCEANS」というプロジェクトに注目しました。海洋廃棄物を回収・分別し、リサイクルされた原材料から繊維を生成し、衣服に製品利用する取り組みです。理念の一つである「海洋ゴミに新たな価値を与え、継続的に海をキレイにする」為には沢山の協力が必要であり、合併を機に発足された「UPCYCLING THE OCEANS JAPAN」では参加者を募っています。

UPCYCLING THE OCEANS – ECOALF(エコアルフ)公式オンラインストア

UPCYCLING THE OCEANSとは、スペイン発のサステナブルファッションブランドECOALFと、ECOALFファウンデーションが主導して行っている、海洋プラスチックゴミを回収・分別・再生し、製品としての新たな命を与えるプロジェクトです。海洋ゴミに新たな価値を与え、継続的に海をキレイにするというミッションに賛同し、この新しい仕組みづくりにご協力頂ける企業・団体・個人を募集しております。

カッコいいエコ

SEAL(シール)は廃タイヤのチューブを使用したハンドメイドのアパレル小物を販売しています。廃タイヤの適正処理は年々見直されていますが、廃棄量が多く、海外では集積場や不法投棄での火災、公害が問題になっています。SEALでは国内外から廃タイヤを回収し、使用環境によって異なるチューブの風合いをプロダクトに落とし込んでいます。また、チューブの持つタフで高性能な材質がバッグやシューズなどと相性が良く、魅力的な製品です。

バッグ・カバンブランド【SEAL(シール) brand】|職人が生み出す、こだわりのメンズバッグ・カバン

日本の職人が生み出す、廃タイヤチューブをメイン素材とした、防水性・耐久性に優れたメンズバッグ・カバン・小物を製造・販売・通販する「SEAL ブランド」のサイトです。

廃棄食材で染める

FOOD TEXTILE(フードテキスタイル)は、廃棄予定の食材を食品関連企業や農園から買い取り、食品から抽出した染料をファッションに活用するプロジェクトです。豊島株式会社が展開しています。食品廃棄と衣類の廃棄は世界的に深刻であり、フードテキスタイルではその2つの問題を結びつけて向き合うことによって、食品事業、ファッション業界から多くの賛同を得ています。また、販売される商品や企業とのコラボレーション製品からは、染料の風合いと温かみが感じられます。

FOOD TEXTILE

Summary of project Interview of background 現在、食品廃棄量の増加は世界的な問題となっています。日本では年間約2800万トン、世界では年間約13億トンも廃棄されており、その中にはまだ食べられたはずの食品も多く含まれます。 ただ捨てられていくものを、生まれ変わらせることで、 “食”を中心とした衣・食・住の生活シーンをファッショナブルに楽しむ ファッション業界から食品廃棄物を再活用するプロジェクト ABOUT US Copyright © TOYOSHIMA & Co., Ltd. All Rights Reserved.

自然の力を活かす

東京卵日和は食品工場で出る卵の殻の特徴を活かした生活雑貨やDIY商品を販売しています。卵の殻はひよこの成長に必要な機能が詰まっていて、中でも吸水性と加工性を活かして製品に取り入れています。

東京卵日和

わたしたちは「卵」から「暮らし」を提案する卵雑貨のブランドです。ここから生まれるすべての商品は、「卵の殻」から生まれ変わっています。「卵日和」の「暮らし」をはじめましょう。

こんな事業も・・・

思い出をグッズに

RE:MEMBERプロジェクトでは解体される国内の歴史的建物の廃材を貴重な思い出の品として再利用したメモリアルグッズをネット販売しています。ぴあ株式会社が展開しています。施設や利用者によって思い出となるものが異なるため、毎回試行錯誤しながら商品企画し、様々な製造方法を試みています。チケット販売会社ならではの利点を活かしたアップサイクル事業です。

廃材を商品にして販売するチャリティ企画 [リメンバープロジェクト]

グッドデザイン賞の仕組みや、過去のすべての受賞対象が検索できる「グッドデザインファインダー」など、グッドデザイン賞に関する情報をご紹介するサイトです。毎年1回(4~6月頃)募集する、グッドデザイン賞への応募もこのサイトから行うことができます。

発想はモノからうまれる

モノ:ファクトリーは物を生み出す〜捨てるまでの過程をトータルで考え、循環社会について考える場として設立されました。商談、工場見学の他、グループ会社である株式会社ナカダイで回収された産業廃棄物を使用した「つくる・こわす」ワークショップの開催も行われています。廃棄素材を活用したアップサイクルの取り組みに加えて、根本的なモノのサイクルについて考える事業を展開しています。

About – モノ:ファクトリー

私たちは、”捨てる”ことを、悪だとは思っていません。もちろん、様々な製品を生み出すことも悪だとは思っていません。 しかし、それらの製品は、残念なことに、いつか役目を終え、不要になります。世の中に存在するほとんどのモノは、最後は粉々にされるか、焼却されて灰になり、埋め立て処分場に運ばれていきます。 …

まとめ

廃棄物を利用した製品の中でも、素材の原型を残したままアップサイクルされる物は特徴の違いや状態により加工の難易度が高く、職人が手作業で製造する物が多いです。手作業やオーダーメイドとなると高価格になるイメージですが、原材料や仕入れ業者の仲介料がかからない為、製品によってはコストを抑える事が出来ます。また調査前のイメージでは、アップサイクルとして利用する廃棄物は「捨てるのはもったいない」という視点が強いと考えていましたが、その廃棄素材ならではの風合いやストーリーに魅力を感じて企画されている事例が多くありました。調査を通して、廃棄物の現状の問題と処理状況、素材としての利用の可能性についての知識が深まりました。