日本古来の素材の今

はじめに

 日本には、昔から日常生活で使われ、日本の文化を作ってきた素材が沢山あります。今でも日常で使われている素材もありますが、あまり使われなくなった素材や、手作業での生産が難しくなり、衰退しかけている素材もあります。現在、そのような日本古来の素材と今の技術と組み合わせて、様々な新しい製品が作られています。この記事では、麻、和紙、米ぬか、柿渋、葛の、五種類の素材を取り上げました。それらの素材を使って作られた製品を紹介します。 

1.麻

 麻は縄文時代から使用されていた、日本人の生活に深く結びついた素材です。衣類をはじめ、縄や網の素材、油の原料、神事などに、幅広く使用されました。特に手入れや肥料を必要とせず育つ麻は、「神からの贈り物」と考えられていました。戦後、アメリカの占領下で大麻取締法が制定されると、麻の生産が厳しく制限されました。現在、麻農家は全国で約40軒しかなく、国産品の希少価値は年々増しています。 

麻を使った製品 

麻デニムパンツ

 麻100%の生地を使ったデニムパンツです。普通、デニムの素材には綿が使われます。これまで、綿と麻を組み合わせたデニムはあっても、麻100%のデニムはありませんでした。丁寧に目を詰めて織ることで、麻だけのデニム生地が作られています。デニムらしい厚みがありながら、綿のデニム生地より薄手です。また、麻は吸水性、速乾性に優れているので、暑い日にも涼しく着ることが出来ます。綿のデニムとは違う特徴を持った、新しいデニムパンツです。  

白、インディゴの二色

麻デニムパンツ

滋賀県東近江で織られた麻100%の生地を使ったデニムパンツ。

ヘンプクリート

 麻がらを砕き、石灰と混ぜて作る建材です。多孔質性により、通常のコンクリートよりも空気に対する透過性が高く、室内の温度調整機能に優れています。また、断熱性、防腐、防カビ、防虫性があります。  

プロジェクト概要

あさ技研プロジェクトへようこそ! 株式会社Pacific Carlineとアメリカの Hemp Technologies Collective と合同企画で日本でヘンプクリートという建材を提供しております。 現在日本では生産量がものすごく少ないため、材料は全て輸入になっており、将来日本の事情が良化なり次第国内生産も考えております。 …

2.和紙

 和紙は、朝鮮から製法が伝わり、その後、日本の風土に適した原材料と製法が生み出された、日本独自の素材です。明治以降は、和紙の製造は機械化が進みました。現在、手漉き和紙は、職人の高齢化などにより貴重な製品となっています。また、和紙の原料である三椏や楮の国内生産量は減少しており、輸入原料も普及しています。 

和紙を使った製品

和紙畳

 こよりに加工した和紙を、交互に編み込んで作られた畳です。樹脂でコーティングされており、撥水性に優れています。イ草の畳に比べて、カビとダニが発生しにくい、日に焼けにくい、傷が付きにくいという特徴があります。見た目はイ草の畳とほとんど同じですが、イ草には無い優れた機能を持っています。現代の技術と和紙を組み合わせた新しい畳です。

こよりに加工された和紙

DAIKEN和紙畳

目指したものは、イ草に近い手触りや質感、調湿性能を再現しつつ、高い機能性を付与した工業生産の畳おもて。DAIKENの機械すき和紙畳をご紹介しています。

和紙タオル

 和紙は、昔から油取り紙として使われています。和紙で作られたタオルなので、皮脂汚れを落とすのに優れています。また、速乾性にも優れていて、衛生的です。和紙の特性が、タオルの優れた機能として生かされています。 

和紙タオル「うるわし」の販売ページ  | 和紙マスク「和風」| 和紙ボディタオル「うるわし」

最初はタオルから色が出ます …

3.米ぬか 

 米ぬかとは、米を精米するとき削ぎ落とされる、外皮や胚の粉の事です。白米は江戸時代頃から庶民にも食べられるようになりました。白米が流通すると、米ぬかも大量に出回るようになり、米ぬか油、ぬか漬け、掃除の際の洗剤替わり、肥料として使うなど、様々な方法で活用されました。米ぬかには抗酸化作用がある栄養素が沢山含まれており、美肌や便秘解消に効果があります。 

米ぬかを使った製品 

化粧品

 米ぬかを使って、化粧水や洗顔料など、様々な化粧品が作られています。米ぬかは昔から使われている美容成分の一つです。米ぬかに含まれる脂肪酸ナトリウムは、天然の界面活性剤と言われていて、洗浄効果があります。また、エイジングケア、毛穴の黒ずみ、シミ予防にも効果的です。 

COMEITTO 米一途

[米一途]デイリー米ぬかライン4点セット

コメヌカ水*、水、プロパンジオール、スクワラン、BG、トリエチルヘキサノイン、イソドデカン、ステアリルアルコール、ソルビトール、メチルグルセス-10,1,2-ヘキサンジオール、サッカロミセス/オオムギ種子発酵液、乳酸桿菌/ザクロ果実発酵エキス、乳酸桿菌/セイヨウナシ果汁発酵液、乳酸桿菌/ダイズ発酵エキス、エチルヘキシルグリセリン、カプリル酸グリセリル、ベタイン、ニンジン根エキス、マカデミアナ…

ポリ袋

 米ぬかを利用したバイオマスポリ袋です。米ぬかは抗菌成分を多く含んでいます。また、においを吸収する効果もあります。抗菌、消臭効果という特性を生かし、野菜保存袋なども作られています。

NEOPLA RB-SERIES | 製品紹介 | 株式会社白石バイオマス

抗菌・消臭!米ぬかを利用したバイオマスポリ袋 RB-SERIESは、米ぬかを配合したバイオマス樹脂です。成形時に、RB-SERIESをブレンドすることで、強い抗菌性と特定の物質に対する消臭性、臭いのマスキング効果を持った高性能・高機能なポリ袋が得られます。 …

4.柿渋

 柿渋とは、熟す前の青い柿をつぶして絞った汁を発酵させ、熟成させた液体です。防腐、防虫、防水、防臭効果など、様々な効能があります。昔から塗料や、染料、または民間薬として、様々な用途で使用されてきました。平安時代に着物の染料として使用されたのが始まりと言われています。 

柿渋を使った製品

柿渋塗り壁

 柿渋と卵の殻が使われた、機能性塗り壁材です。繊維質を含まないのでホコリが出ず、カビも生えにくいので、喘息やアレルギーのある人でも安心して過ごすことができます。他にも、消臭、防火、調湿、断熱効果などがある、多機能な塗壁材です。

機能性柿渋塗り壁

塗り壁

柿タンニンで24時間きれいな空気をお届けいたします。 珪藻土は調湿に最適 ⇔ 飽和状態になると悪臭を再放出 漆喰はアルカリ性で空気を浄化する ⇔ 年月を経て石化後機能がなくなる 塗り壁の材料には長所と短所があります。 柿渋タンニンが漆喰・珪藻土と融合する事により、短所をタンニンで補い長所のみを発揮させることができます。 更にタンニンには以下の機能が証明されております。 VOC除去能力 …

柿渋石鹼

 石鹸、シャンプー、洗顔料などに柿渋が使われています。柿渋に含まれるタンニンには、消臭効果、抗酸化作用があり、頭皮の臭いや加齢臭を抑えるのに効果的です。また、殺菌、消毒、保湿効果もあります。

薬用柿渋シリーズ

5.葛

 葛は昔から食品や生薬として利用されてきた、日本の伝統的な植物です。根、葉、花、つるに至るまで、全ての部分が利用されます。イソフラボンやサポニンが豊富に含まれており、更年期障害や血流の改善、骨粗鬆症の予防などに効果があります。 

葛を使った製品

フェイスパウダー

 葛粉と天然の絹雲母をベースにしたフェイスパウダーです。葛粉は、葛の根から繊維質を取り除き、でんぷんだけを取り出して乾燥させたものです。漢方や和菓子の材料などにも使用されますが、化粧品として使用するのは新しい試みです。天然素材で出来ている、肌に優しい化粧品です。 

ちどりやオリジナル フェイスパウダー

【葛粉配合おしろい】 …

葛布

 縦糸を綿、横糸を葛の糸で織った布です。葛のつるから採った繊維が使われます。日本の三大原始布の一つであり、静岡県掛川市の伝統工芸品です。江戸時代には武士の袴や裃に使われ、明治時代には高級壁紙として海外に輸出されていましたが、今では装飾品や民芸品に使われることがほとんどです。  

掛川手織葛布|静岡郷土工芸品振興会

葛布とは山野に自生するマメ科の植物葛の靭皮(じんぴ)繊維を織り上げた布のこと。地元の人はカップと呼び、掛川の特産物です。掛川が葛布の特産地として歴史的に初めて認識されたのは、鎌倉時代といわれ、武士の乗馬袴地に用いられました。 …

まとめ

 日本には、今回取り上げた五種類以外にも、古来の素材が沢山あります。日本古来の素材は、自然から生まれ、使い終わったら自然に還る、循環する素材です。古来の素材を生活の中に取り入れ、使い続けていく事は、文化を守り継承するだけではなく、これからのごみ問題や環境問題の解決にも繋がるでしょう。今回調べた中で、化粧品、衣類、建材といった、身近で生活に欠かせない物にも古来の素材が使われており、日常生活に取り入れやすいと感じました。日本人が自然と共に生きてきた証として、後の時代にも受け継いでいくべきだと思います。

執筆者:若山知英

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