新・塗料
はじめに
近年、素材研究が進み、塗料は物体を保護するだけでなく、僅か数ミリの塗膜で強度を各段に上げたり、そのモノの特性をまるっきり変えてしまったりしてしまうものもあります。今あるマテリアルは研究がされ尽くされており、強度などの限界が見えてきている人が宇宙や新たな境地へ進出するには、そのマテリアルにどんな加工をするかが重要になってくる。人類に新たなイノベーションを起こすであろう新たな塗料の世界をご紹介します。
グラフェン塗料
これは、スペインの企業がナノテクノロジーによって実現した、画期的な「高性能ペンキ」。グラフェンによって、これまで考えられなかったほどの強度を実現していると言います。
塗膜が強いということは、薄くてもOKということであり。1リットルで塗れる面積は、なんと128平方メートルで、これは畳で言えばおよそ70枚分。重ね塗りをする必要もないので、手間もかからない。
石灰ベースで安全性も高く
CO2も吸収
さらにこのペンキ、主成分は石灰です。石灰は自然に優しい天然素材なので、有機溶剤や重金属も含まなず、安全性も期待されています。つまり性能面だけじゃなく、エコでもある。
また石灰は、二酸化炭素(CO2)を吸収する性質もあるので、緑がたくさんある場所のように、空気を綺麗にしてくれる効果もある。
脱・ヒートアイランド
「Graphenstone」のアジア・太平洋地域マネージャーであるJorge Gill氏は、こう述べます。
「グラフェンが熱を閉じ込めてくれるので、暑い日でも室内の温度は上がりにくく、寒い日には温かさをしっかり保ってくれます。塗装全体に熱が広がり保たれるので、ヒートアイランド現象が起きにくくなるのです」
日進月歩のナノテクノロジー。世界中の建物がグラフェンで包まれる日も、そう遠くないかも?
液体ガラス
液体ガラスは、木材の弱点を克服し、木本来の香りや木目の美しさを保つことを可能にした世界初の加工塗料。従来の塗料に比べ、着色性・伸縮性・屈曲性に優れ、環境負荷も少ないことから、近年、古い文化財や新しい施設への使用が広がっている。今後も木・竹・紙などを本知財で保護することで、インフラや建築、その他の領域において改質、強化、保全、補修を実現することが期待されている。
なにがすごいのか?
- 木材の弱点(傷み、可燃、汚れ、腐食、カビ、シロアリ食害、紫外線劣化など)を克服する新素材
- 人体や環境へ悪影響を与えず、長期にわたって性能が持続
- 木材以外の天然素材とも高い融合性
厳島神社や伏見稲荷ほか全国の神社、仏閣、木造建築物、山手線高輪ゲートウェイ新駅、九州豪華列車「ななつ星」など、新旧の建造物にも採用されている。
塗ったところがヒーターになるコーティング剤
Carbo e-Therm (カーボ・イーサーム
Carbo e-Therm (カーボ・イーサーム)は、カーボンナノマテリアルを利用した電気加熱用コーティング剤だ。ヒーターを付加したい材料に電極を形成した後、塗布し乾燥後に電源を接続する事で、塗布部分がヒーターとなる。風力発電のブレードやソーラーパネルに塗って雪を溶かすことが可能である。その特徴を生かしドアや風呂と連携させ、雪国における雪害対策にも有効であり、将来的にIoTデバイスと連携させるなどの広がりが期待できる。また、地球より比較的温度の低い火星への移住の際に役立つかもしれない。
Vantablack(ヴェンタブラック)
引用元:https://www.surreynanosystems.com/about/vantablack
Vantablackとはとてつもなく光を吸収する黒色塗料です。光吸収率は99.8%という驚きの高さ。あまりの黒さゆえに着色した部分は、奥行きや立体感が掴めなくなり、人間の視覚では対象物を正しく識別することは難しい。またVantablackの原料となっている素材の強度は鉄の10倍、熱伝導率は銅の7.5倍ほどで、塗料以外にも様々な転用が期待できる。
また、Vantablacは、集光型太陽熱発電の素材として用いることで、熱の吸収を高めることができる。また軍事では、熱カモフラージュ等の応用がある。Vantablacの放射率と拡張性が、幅広い応用を可能にしている。
通電すると光る塗料
LumiLor(ルミロール)
LumiLor(ルミロール)は、通電することによって光る塗料である。一般的な塗料が使用できる場面では活用することができる汎用性の高い素材。現在は8色のバリエーションが取り揃えられており、電気系統をコントロールすることにより様々な光らせ方が可能となる。装飾だけでなく車の方向指示器や尾灯、楽器や看板、建物など場所に活用が期待される。
またルミロールは、発光時に触っても熱を感じない。仕様に沿って塗布すれば約0.1mmの薄膜となり、最大で180度の柔軟性がある。(施工条件により)フィラメントが破損することがなく安心である。また、光源に対して離れた場所から、暗闇、煙、霧の中でも非常によく見える。見やすく、目にやさしく、エネルギー消費が少ない素材である。
塗装できる材料は、金属、木材、グラスファイバー、カーボンファイバー、プラスチック、ビニールなど。用途は乗用車、航空機、自転車、ヘルメットなどがあり、海外では高級車やスーパーカーなどへの実績もある。
収縮変化に追随する木工塗料
オフィス家具等を製造・販売するオカムラは、国産材(針葉樹)を利用した家具に最適な木材用塗料を日華化学、大谷塗料と共同で開発した。オカムラのオフィスファニチュアシリーズ「Lives(ライブス)」の新製品であるカフェテーブルの塗装に採用した。
オカムラは2009年に「木材利用方針」を策定し、オフィス家具や公共施設向け家具などの分野で積極的に国産材利用を推進してきた。針葉樹材(スギ・ヒノキ)は建材として古くから利用されているものの、その柔らかさや材の割れなどにより家具に利用することに多くの課題があった。
今回開発した木材用塗料は、高度な日華化学のポリウレタン技術と豊富な経験に培われた大谷塗料の木材塗料化技術を融合した紫外線硬化型塗料で、オカムラの木材加工技術を用いて針葉樹材(スギ・ヒノキ)に使用することで、耐衝撃性と硬度を確保した国産材のオフィス家具として提供することが可能となったという。
新開発した「木材用紫外線硬化型ウレタン塗料」の特徴は、杉材に対して、耐傷性、衝撃性を付与する硬度に加え、木材の反りや収縮変化に追随することが可能。硬さと伸びの相反する特性を、独自のポリマー技術で両立している。また、木材の温かみや触感を損なわないポリマー弾性に加え、耐久性、防汚性といった機能性も付与している。最後に植物性由来原料を使用しており、環境、安全に配慮されている。
オカムラは、温かみのある感触や香り、軽量といった利点を生かし、かつ耐久性のある家具の提供が可能になる技術として、国産材利用に貢献できるよう、この木材用塗料を広く採用を進めていく。同時に「木材利用方針」に基づく製品開発を行うとともに、それらの製品を用いた空間を提案することで、森林資源の持続可能な利用を推進していく。
熱でフライパンが色変化 センサーコーティング
ドイツのキッチンウェアブランド、フィスラーは、内面全体の色の変化で、食材を入れるタイミングを知らせるフライパンを開発した。
フライパン内面全体には、同社独自技術の“サーモセンシティブコーティング”を採用しており、熱するとフライパン内面全体の色が、明るい赤から濃い赤に変化。調理を開始するベストタイミング(約180~190度)がわかる。
料理は食材に対して均一に熱を与えることが重要であるが、熱ムラが起こると、食材の部位によって味が変わる。フライパンに“サーモセンシティブコーティング”を施すことで、全体の温度が把握でき、満足のいく仕上がりを手助けする。